パスワードの使い回しや高度化するフィッシング攻撃、MFAをすり抜ける不正アクセスの増加により、認証は単なるITの課題ではなく、事業継続と信頼性を左右する経営課題へと変化しています。
いま、企業セキュリティの最大のボトルネックは「認証」にあります。
実際の現場では、

「MFAを導入したものの、運用負荷が高まり形骸化している」
「プッシュ通知の誤承認や問い合わせが増え、情シスが疲弊している」
「これ以上強化すると業務が止まるというジレンマに陥っている」

といった声が少なくありません。
こうした状況の中で、パスワードに依存しない国際標準の認証規格「FIDO2」が注目されています。
本記事では、2026年時点の最新の状況を踏まえ、FIDO2の必要性、従来のMFAとの決定的な違い、そしてどのような企業に向いているのか、実務的な視点で解説します。

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なぜ今、企業でFIDO2が注目されているのか

パスワード認証が限界を迎えている理由

パスワード認証は長年使われてきましたが、以下の構造的な限界により、単体ではもはや安全を担保できません。

1.使い回しと漏洩リスク
人間が管理できる記憶には限界があり、複数サービスでの使い回しは避けられません。
一箇所の漏洩が、連鎖的な不正アクセスを招く「クレデンシャル・スタッフィング(リスト型攻撃)」の温床となっています。

2.フィッシングに極めて弱い
どれほど複雑なパスワードでも、ユーザーが巧妙な偽サイトに入力してしまえば意味を成しません。
「人間の注意力」に依存する設計そのものが脆弱です。

3.運用コストの増大
定期変更や複雑なポリシーは、パスワード忘れによるヘルプデスクへの問い合わせを急増させ、企業の生産性を著しく低下させます。

 

MFA普及後に顕在化した新たな攻撃リスク

MFA(多要素認証)は重要な進歩でしたが、2026年現在、攻撃手法はさらに進化しています。

MFA疲労攻撃から「AiTM攻撃」へ
2022年頃に多発した、大量のプッシュ通知を送って誤承認を誘う「MFA疲労攻撃」は、番号マッチングの標準化により一定の抑止効果が得られました。

現在の主流は「AiTM(Adversary-in-the-Middle)攻撃」
攻撃者が正規サイトとユーザーの間にプロキシサーバーを介在させ、MFA突破後の「セッショントークン」を直接盗み出す手法です。
この攻撃では、MFAそのものが破られるのではなく、MFAを通過した後のセッションが窃取されるため、防ぎきれないケースが発生します。

MFA疲労攻撃については「MFA(多要素認証)疲労攻撃とは?」の記事をご覧ください。

FIDO2はどんな企業に向いているのか

FIDO2が向いている企業の特徴

フィッシング対策を最優先したい企業
金融、医療、製造、重要インフラなど、標的型攻撃リスク・情報漏洩の影響が大きい業種。

MFA運用に限界を感じている企業
誤承認やSMS遅延、認証アプリの設定ミスによる問い合わせ増加に悩んでいる場合。

ゼロトラスト移行を進めている企業
デバイスの健全性と強固な本人確認をセットで検証するゼロトラストモデルにおいて、FIDO2は「認証・認可」の基盤として極めて相性が良い方式です。

 

慎重に検討すべきケース

デバイス管理(MDM)が未整備:認証器の配布・管理が煩雑になる恐れがあります。
共有端末が多い環境: 1台のPCを多人数で使う工場や店舗などの現場。
ITリテラシーのばらつき: 導入初期の登録フローに手厚いサポートが必要になる可能性があります。

 

FIDO2とMFAの違いを「運用視点」で比較する

代表的な認証方式の比較

方式 フィッシング耐性 ユーザビリティ AiTM攻撃耐性 備考
SMS/音声OTP × 低い △ 遅延あり × 無防備 SIMスワップのリスクあり
TOTPアプリ × 低い 〇 慣れが必要 × 無防備 コード入力の手間が発生
プッシュ通知 △ 中 〇 ワンタップ × 無防備 番号マッチングが必須
FIDO2(パスキー/セキュリティキー) ◎ 極めて高い ◎生体認証 ◎構造的防御 ドメイン検証による物理的防御

FIDO2が従来のMFAと一線を画す3つの技術的優位性

1. 秘密鍵をサーバーに送らない
公開鍵暗号方式を用い、秘密鍵はデバイス内の安全な領域(TPM等)に隔離されます。
サーバー側には公開鍵のみが保存されるため、サーバー侵害時でも認証情報を悪用できません。

2. 認証器によるドメイン検証(RP ID検証)
ブラウザと連携し、登録済みドメイン以外での署名を物理的に拒否します。
ユーザーが騙されても、技術的にフィッシングが成立しません。

3. AiTM攻撃への構造的耐性
セッショントークンを第三者に引き渡す隙を与えず、プロキシによる通信の中継(情報の盗み見)が大幅に成立しにくくなります。

 

パスワードレス実現におけるFIDO2の役割

FIDO2は、W3C(Web)とFIDO Alliance(業界団体)が策定した世界標準の規格です。
主要なOS(Windows, macOS, iOS, Android)やブラウザ(Chrome, Edge, Safari)がネイティブ対応しているため、特別なソフトを入れずとも高度なセキュリティを実現できます。

現在、AppleやGoogleが推進する「パスキー(Passkey)」もこのFIDO2規格に基づいています。
これにより、「セキュリティは高いが面倒」だった認証が、「生体認証で素早く終わる」という高いユーザビリティへと昇華されました。

リモートサービスへのパスワードレス認証とは?

FIDO2導入前に整理すべき5つのチェックポイント

1. 端末管理: MDM等でのデバイス登録フローが整備されているか。
2. 既存ID基盤: Entra ID(旧Azure AD)やOktaなど、FIDO2対応IdPを利用しているか。
3. 対象システム: SaaSだけでなく、VPNやVDI環境のWebAuthnリダイレクト対応状況はどうか。
4. 運用体制: 認証器(デバイス)の紛失時に管理者が「一時アクセスパス」を発行する手順があるか。
5. 復旧フロー: ユーザーが自分で行えるセルフサービスのリカバー手段を用意できるか。

 

既存認証基盤とFIDO2はどう共存できるか

クラウドID(Microsoft Entra ID等)
Microsoft Entra IDは、FIDO2/WebAuthnをネイティブサポートしています。
条件付きアクセスポリシーを活用し、「社外からのアクセス時のみFIDO2を要求する」といった段階的な運用も可能です。

実現手段の一例:MagicEndpoint
WinMagicが提供する MagicEndpointは、ブラウザベースの認証に留まらず、OSログインからVPN、レガシーなアプリケーションまでを統合的にパスワードレス化します。
既存のAD環境を維持しながら、エンドポイント側で強固なFIDO2認証を後付けできる点が、多くの企業にとって現実的な解となります。
MagicEndpoint(パスワードレス認証ソリューション)については詳細ページをご覧ください。

失敗しないFIDO2導入ロードマップ

Step 1: PoC(概念実証)
IT部門などの限定的なグループで、登録フローとトラブル対応(紛失等)を検証。

Step 2: 段階展開
財務・人事などの高リスク部門から優先導入。フィードバックをもとにFAQを充実させる。

Step 3: 全社展開
既存のMFAと並行期間を設け、ユーザーが慣れた段階でパスワードログインを無効化。

詳しい導入ステップは「FIDO2&多要素認証(MFA)実装ガイド」からご確認ください。

 

よくある質問

Q1. パスキーとFIDO2は何が違いますか?
A.FIDO2は技術規格の名称です。パスキーは、その規格を利用して「デバイス間で同期できる」ようにしたり、「生体認証で簡単に使える」ようにした実装の呼称です。

Q2. 認証器を紛失した場合はどうなりますか?
A.管理者が一時的なログインコードを発行したり、予備の認証器(物理セキュリティキー等)を事前に登録しておくことで、即座に業務を再開できます。
MagicEndpointでは、クライアントPC自体が認証器になるため、物理セキュリティーキー等が不要です。
MagicEndpoint紹介動画を見る

 

まとめ

FIDO2は万能ではありません。しかし、「フィッシング耐性」「AiTM攻撃への構造的防御」「運用負荷の低減」を同時に満たす認証方式は、2026年現在、FIDO2以外に存在しません。
重要なのは、一度にすべてを切り替えることではなく、自社のリスクモデルに適合した形で段階的に導入を進めることです。

判断の要点
1.FIDO2の本質は「人間の注意に頼らないフィッシング耐性」
2.MFAとの併用・重要システムからの段階移行が現実解
3.成功の鍵は、紛失・機種変更時の「復旧フロー」の設計にあり
4.ゼロトラスト実現における「信頼できる認証」の中核技術
FIDO2導入やパスワードレス化への具体的なアプローチについてご検討の際は、ぜひWinMagicへご相談ください。
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